オンオフライン
〜オリジナル小説〜

著者:レティ


 俺には幼馴染がいる。
 同じ年で、徒歩十五秒の距離の家に住む幼馴染。
 美人かどうかと聞かれたら別に普通だろと答える。
 というか、自分が女の子を見る基準というものがその幼馴染を基準に考えてしまうからだ。
 そして世の中、あまり美人な人って少ない気がする。つまりはまあ、そういう事だ。
 ってな話をしたら学友から盛大に怒られてしまった。
「勇次、お前絶対世の中をナメてる。世の中な、香里さんみたいな美人ばかりじゃないんだぞ?」
 悪友の啓太は今にも怒りを暴発させそうになりつつ俺に言い聞かせてくる。
「でもなぁ、今更こんな価値観変わるもんじゃねーだろ? それに……」
「それになんだよ、言ってみろ」
「幼馴染つっても仲が良かったの中学生なる前までだぜ? 高校生になって幼馴染なんてねーよ」
「高嶺の花だと気づいたか」
「いんや、アイツはそーゆー性質じゃない。そうじゃなくて……」
「何だ、言ってみろ。今なら許す」
 許されなかったらどうなるのだろう。
「まあ、年頃の男女の間に友情が芽生えるのかはなはだ疑問。そーいう事です」
「何だそりゃ」
 曖昧な言葉に啓太は呆れた口調で答えを返した。


 そんな高校生活を送ってる俺に、不倶戴天の敵がいる。
 名前はユージ。年齢不詳、性別不詳、レベルは最大値の55でほぼ間違いなし。
 ……オンラインゲームの話だ。
 このゲームことヴァルハラ戦記は比較的簡単にレベルがカンスト(カウンターストップの略、つまり最高レベル)まで上げるのが簡単なゲームだ。
 むしろ、それから自分の腕前をどれだけ鍛えるかが問題で、メインの楽しみである対人戦、他のプレイヤーとの戦いは腕前が全てを分けると言ってもいい。
 学生の身分としては学業をおろそかにしない程度にハマっているのだが、そこで強敵とであった。
 それがユージ。何を考えているのか経験値を稼ぎ、アイテムを集めてる間に遭遇すること百回以上。
 最初は競争するだけの状態だったが、やがてお互い相手を倒し独占を図ろうと試みていた。
 日曜丸一日、十八時間かけて手に入れたレアアイテムを奪われた時の悲しみは忘れられない。
 そう、俺はあの時復讐を誓ったのだ。
 勇次がユージに復讐する。……なんとなく虚しい物を感じた。


 けれどまあ、それもあくまでゲームはゲーム。
 程よく楽しんでいるのに間違いはない。というか、それ以上にハマるのは避けたい。
 夜遅くまでゲームを続け、翌朝眠くて仕方の無い日もある。
 ユージと出会うとついつい決着がつくまで延々と戦ってしまいがちだ。
 授業中、大きく欠伸をすると、運悪く教師に見咎められた。
「おい、中村、西田。お前ら仲がいいのは認めてやるが、せめて欠伸ぐらい見えない所でしろ」
 名前を呼ばれて俺と香里は互いの顔を見合わせてしまった。
「……おい、もしかして今欠伸した?」
「……昨日、ちょっと夜更かししちゃって」
 なんだかんだで俺達は似たもの同士だった。
 それがちょっとだけ気に入らなくて、顔を背けた。


 そんな事があった日の夜。
 今日も今日とてヴァルハラ戦記をスタート。
 予想に漏れず、ユージと遭遇する。
「……ストーカー?」
「それはそっちだろ」
 ちなみにこちらのキャラクターはカオリという名前の女性キャラ。
 特に深い意味は考えずに直感で選んだらそうなった。
 そうなったのは仕方ないので香里みたいなしゃべり方をしている。
 対するユージは俺に似ず乱暴で粗野なヤツだ。
「どうしていつもいるんですか? もしかして自宅警備員?」
「それはそっちだろ? こちとら人生真面目に生きてるんでね。万年引きこもりに邪魔されたくないね」
 どうしてこう腹が立つんだ、ユージめ。
 そう思った瞬間だった。
 突然、画面が揺れた。
 画面だけじゃない、パソコン……というか、机というか、俺もというか、家ごと。
 小さな地震のようだった。
「うわ、地震」
 奇しくも同時にそう発言する。
「え、そっちもですか」
「そっちも? 範囲広いのかねぇ」
 そう言いあって地震情報をネットで確認。
 震度1、うちの地元だけ。
 発生地域は遠くの海。
 なんとなく、嫌な予感がした。
「ところで聞いてもいいですか、ナカムラさん」
「こっちも聞きたいね、ニシダさん」
 打てば響くように帰ってくるこの返事。
「何で俺の名前使ってんだよバカオリ!」
「そっちこそ私の名前使わないでよユージューフダン!」
 互いに禁句にしてた悪口を使う。


「で、その話のオチは?」
 ジュースを片手に啓太は笑顔を見せる。
「香里と付き合う事になった。いやあ、いいもんだな、本音の喧嘩って」
 結局お互いに電話で一晩語り合ったあげく、なんかそういうオチがついた。
 空白の距離は一瞬で埋まり、お互いに素の自分を見せまくる。
 そのうちなんだか、お互いに助け合った時の事も思い出してなんとなくいい空気になり。
「勇次、くたばれっ」
 啓太をキレさせる結末を迎えた。


 おしまい☆


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